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ホッキョクグマの毛皮を調べると、「かなり高い値段で売れる」「毛皮目的の密猟が絶滅の主因」といった説明が見つかります。でも、現在の状況はそれほど単純ではありません。
先に結論をいうと、合法的に取引される毛皮はありますが、国際取引には許可が必要で、だれでも自由に売買できるものではありません。また、状態や由来が異なる毛皮に一律の「相場」を当てはめることもできません。ホッキョクグマの将来にとって最大の脅威とされているのは、現在は気候変動による海氷の減少です。
この記事の要点
- 現在の毛皮価格を一つの数字で示せる公的な相場は確認できない
- ホッキョクグマはCITES附属書IIに掲載され、国際取引が管理されている
- IUCNの区分はVU(危急)で、最大の脅威は海氷の減少
- 「シロクマ」は一般にはホッキョクグマの通称
ホッキョクグマの毛皮はいくらなのか
現在の毛皮について、「1枚いくら」と責任を持って示せる共通価格はありません。合法的に流通する場合でも、産地、合法的な捕獲を示す書類、毛皮の状態、加工の有無、取引の時期などで条件が変わります。古い売買例や海外オークションの一例を、そのまま現在の相場として扱うのも適切ではありません。
この記事の旧版には「100万~300万円で取引される」という記載がありました。しかし、出典と時点を確認できなかったため削除しました。金額の大きさだけが独り歩きすると、合法的な管理下の取引と違法な取引まで同じものに見えてしまいます。
高く売れるから、今も世界中で自由に狩られていると思っていました。
過去には無制限な狩猟が大きな問題になりましたが、現在の管理は国や地域で異なります。少なくとも「高値だから、どこでも自由に捕獲できる」という説明は正しくありません。
毛皮の国際取引はCITESで管理されている
ホッキョクグマは、野生動植物の国際取引を管理するワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載されています。附属書IIは「すべての取引を禁止する」という区分ではありませんが、輸出には許可が必要です。取引が野生個体群の存続を脅かさず、合法的に得られたものかを確認する仕組みがあります。
世界のホッキョクグマの多くが生息するカナダでは、先住民による捕獲や利用が文化・生活と結びついています。地域ごとの制度に基づき、捕獲枠、タグ、報告、輸出許可などで管理されています。カナダ政府の説明でも、国際取引は許可ごとに合法性と持続可能性を確認するとされています。
| よくある理解 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| 絶滅危惧種だから取引はすべて違法 | CITES附属書IIでは、条件と許可のもとで国際取引が行われる場合がある |
| 毛皮には決まった相場がある | 由来や状態、地域、時期が違うため、一律の現在価格とはいえない |
| 取引が絶滅危機の最大原因 | 現在、最大の脅威とされるのは気候変動による海氷の減少 |
もちろん、許可のない捕獲や取引まで正当化されるわけではありません。ただ、保全を考えるときは、違法取引、管理された捕獲、先住民の権利を分けて見る必要があります。
ホッキョクグマはどのくらいいる?
WWFジャパンはホッキョクグマをIUCNレッドリストのVU(危急)として紹介し、個体数の目安を約2万6,000頭としています。これは正確な頭数を一頭ずつ数えた数字ではなく、調査が難しい北極圏の推定です。地域ごとに個体群の状態も異なり、増減の傾向を十分に把握できていない場所もあります。
「約2万6,000頭いるなら、すぐには絶滅しないのでは」と感じるかもしれません。しかし、現在の頭数だけで安全とは判断できません。繁殖や採食を支える環境が今後どう変わるかも、絶滅リスクの評価に含まれます。
最大の脅威は海氷が減ること
ホッキョクグマは海氷の上からアザラシを捕らえ、体に必要な脂肪を蓄えます。海氷が早く解け、再び張る時期が遅くなると、狩りに使える期間が短くなります。単に「住む場所が狭くなる」だけではなく、食べ物を得る機会そのものが減るのです。
Polar Bears Internationalは、IUCNの専門家グループが気候変動による海氷の減少を最大の脅威としていると説明しています。2025年に公表された西ハドソン湾の研究でも、海氷減少と体の状態、繁殖、個体群減少を結びつける結果が報告されました。
一方、すべての地域で同じ速度で減っているわけではありません。「やがて必ず全頭がいなくなる」と時期まで断定するのも、「今いるから問題ない」と見るのも乱暴です。個体群ごとの調査を続けながら、温室効果ガスの排出削減と地域の管理を組み合わせる必要があります。
ホッキョクグマの毛は白くない?
白く見える体毛は、色素で白く塗られているわけではありません。一本ずつの毛はほぼ透明で、光が散乱することで白く見えます。皮膚は黒く、厚い脂肪と密な体毛が寒い環境で体温を保つのに役立っています。
「毛の中が必ず空洞で、そこを光が通って皮膚を温める」という説明もよく見かけます。中空構造は観察されていますが、体毛が光ファイバーのように紫外線を皮膚へ運ぶという古い説明には異論があります。見た目の不思議さと保温の仕組みを、同じ説明で決めつけないほうが安全です。
シロクマとホッキョクグマの違い
日常会話でいう「シロクマ」は、ほとんどの場合ホッキョクグマの通称です。動物園では正式な和名として「ホッキョクグマ」と表示されることが多く、英名はpolar bear、学名はUrsus maritimusです。
ただし、「白いクマ」という言葉だけなら、色素が少ない別種のクマを指す場合もあります。ホッキョクグマはアルビノのヒグマやツキノワグマではなく、北極圏の海氷環境へ適応した別の種です。
動物園で見るときは、白い毛だけでなく、泳ぎやすい大きな前足や小さな耳にも注目すると、北極で暮らす体の工夫が見えてきます。
動物園へ行く前は現在の飼育情報を確認する
ホッキョクグマを飼育する施設や個体は変わります。古い記事の一覧だけで出かけず、動物園・水族館の公式サイトで、現在の飼育状況、展示時間、休園日を確認してください。暑さや健康管理のため、見られない時間帯が設けられることもあります。
ほかの動物記事は、サイト内の「虫、動物カテゴリー」から確認できます。
値段だけでなく、取引の条件と生息環境を見る
ホッキョクグマの毛皮には合法的な取引例がありますが、だれでも自由に売買できるものではなく、現在価格を一つの数字で示すこともできません。金額のうわさだけを追うより、どこで、どの制度のもとで、どのように管理されているかを見るほうが実態に近づけます。
現在の大きな課題は、狩猟だけではなく海氷の減少です。かわいい動物として眺めることと、その動物が生きる環境を知ることは両立します。次に動物園で会ったときは、北極の海氷と食べ物のつながりも思い出してみてください。
参考:WWFジャパン「ホッキョクグマ」、カナダ政府「Polar bear: non-detriment finding report」、Polar Bears International「Status」(2026年8月4日確認)